ダイエットとストレス──「努力しても痩せない」背景を考える

過去に担当したクライアント様の事例をシェアします。ダイエット=カロリー収支をマイナスなすることは大原則ですが、マイナスにしにくい要因や食べたものが適切に消化されなかったり、ホルモンバランスの乱れがあることで、明らかに痩せにくくなります。体重コントロールの参考にしてみてください!
依田 太一 2025.10.10
誰でも

ある事例から見えること

以前、ある20代女性のクライアントを担当していた。

仕事の負荷が非常に高く、睡眠時間も短い。週1回のトレーニングと食事改善を1年間続けたものの、体重は–1〜2kg、体脂肪率も30%前後で停滞していた。

ところが、転職をきっかけに環境が大きく変化。ストレス源が減り、2か月で–5kg、体脂肪率も数値として明確に下がった。

このとき食事量や運動量はさほど変わっていなかった。

では何が変わったのか。

自律神経の切り替えが鈍ると、代謝が落ちやすいのではないか

人の身体は「緊張モード(交感神経)」と「休息モード(副交感神経)」を切り替えて動いている。

慢性的なストレス下では、交感神経が過剰に優位になりやすく、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが分泌され続ける。

このホルモンには血糖値を上げ、脂肪を蓄える方向に働く性質があるとされる。

(※参考:厚労省・健康情報サイトなどで解説あり)

つまり、「代謝を上げるスイッチ」が入りにくくなっている状態だったのかもしれない。

本人が「頑張っているのに変わらない」と感じていたのは、行動の問題ではなく身体の受け取り側の回路がうまく作動していなかった可能性がある。

ストレスが食欲を変えるメカニズム

強いストレスを受けると、ドーパミンという“報酬”の神経伝達物質が鈍くなりやすく、

短期的に心を落ち着かせる手段として甘いものや脂っこいものに手が伸びる。

これは「意志が弱い」ではなく、脳の生理的反応として自然なものだ。

また、血糖値が急上昇して急降下すると、再び食欲が刺激される。

いわゆる「ジェットコースター血糖」と呼ばれる現象で、結果として“食べすぎ→自己嫌悪→再ストレス”のループに陥りやすくなる。

このようなケースでは、我慢よりも環境設計や置き換え行動(例:甘いものを欲したらまず水を飲み、10分歩くなど)の方が有効な場合が多いと考えられる。

睡眠とホルモンの関係──寝不足は「太りやすい身体」をつくるかもしれない

睡眠不足が続くと、**レプチン(満腹を感じる)**が減り、グレリン(空腹を感じる)が増えることが複数の研究で報告されている。

また、体内時計が乱れることでインスリン感受性が下がり、同じ食事内容でも血糖値が乱れやすくなる。

つまり「寝不足でも痩せる努力はできる」けれど、「効率が著しく下がる」可能性がある。

行動の前にまず眠れる環境を整える。これが、最短の近道になることもある。

メンタル設計──我慢ではなく選択へ

ダイエットという行為を「制限」ではなく「選択」と捉えるだけでも、ストレス反応は軽減する。

「食べられない」ではなく「今日はこれを選ぶ」という意識。

脳の認知負荷が下がり、続けやすくなる。

SNSの情報も同様だ。

他人の成功事例は前提条件がまったく異なる。比較しても正確な判断材料にはならない。

必要な情報を最初に整理したら、**自分のデータ(体重・体調・睡眠記録など)**を追う方が建設的だ。

書くことで「脳の机を片づける」

寝る前にノートへ感情や思考を書き出すと、作業記憶(ワーキングメモリ)の占有が減る。

スマホではなく紙とペンで書くことが重要で、これは単なる日記ではなく「脳の整理整頓」に近い。

翌日のストレス閾値(いきち)が下がり、結果的に過食や焦燥を防ぐ助けになることもある。

この事例から導ける仮説

ストレスは“敵”ではなく、“身体を守る防衛反応”でもある。

ただし、そのモードが長引くと代謝や睡眠、食欲の調整に影響が出る可能性がある。

このため、食事制限や運動量の増減だけでなく、ストレス・睡眠・神経系の回路を整えることがダイエット成功の鍵になるのではないか。

まとめ

  • ストレス環境を抜け出したことで、代謝やホルモンの働きが本来のリズムを取り戻した可能性がある。

  • ストレスホルモン・睡眠ホルモン・食欲ホルモンなど、神経・内分泌のバランスが崩れると痩せにくくなる傾向がある。

  • 我慢よりも「選択の言葉遣い」や「環境設計」「書き出し習慣」が効果的に働くかもしれない。

これらは「絶対こうすれば痩せる」という話ではなく、

現場で見られた事例から浮かび上がる身体の適応反応の仮説である。

一人ひとりの背景に応じて、観察と検証を繰り返すことが重要だ。

最後に

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